鯖の糠漬け(へしこさば)仕込み作業
2011.05.26
カネイシでは年に1度のペースで鯖の糠漬け(へしこさば)の
仕込み作業を行っております。
上の画像は、冬の寒い時期に行われた塩漬け作業。
鯖の糠漬けは、若狭(越前)から能登にかけての沿岸部で伝統的に作られている郷土料理で、若狭や越前などでは「へしこさば」。能登では「こんかさば」と呼ばれていますが、メディアなどで若狭の「へしこさば」が露出している反響で、通称としては「へしこさば」と呼ばれているのが一般的なようです。
その昔、現在のような温度管理による食材の保存ができなかった頃、この地域の漁師たちが長い航海の最中でも腐敗せずに食べることができる保存食として重宝されておりました。
カネイシでは伝統的に鯖の糠漬けを作り続けており、毎年冬から春にかけて仕込み作業を行っております。
まず、脂の乗った新鮮な鯖を塩漬けにします。越前のへしこさばなどは、頭が付いた状態でワタのみを取り除いた形での製品が多いのですが、カネイシの鯖の糠漬けの場合は、頭を落とした状態でワタを取ってあります。なので、有頭の物から比べると魚体が小さく感じるかもしれませんが、実際は頭を落としてあるため、視覚的に小さく見えるだけで、実際はかなり大きな鯖を原材料として使用しております。
下処理をした鯖を塩の中に埋め、重石をかけて鯖の水分を抜きます。そして能登に新緑の季節が訪れる5月の中旬まで寝かせた後、米糠に合わせ、じっくり発酵熟成させてから出荷します。その熟成期間は2年以上になる長期熟成品です。
2011年度分の仕込みが昨日終わりました。
終わったといっても、これから仕上がるまで、日々手塩をかけて面倒を見る必要があります。
因みに昨年仕込んだロットはこんな感じです。
今現在は一昨年仕込んだロット(2009年物)を出荷しておりますが、その次には上の2010年物が出荷の時を待っております。
この鯖の糠漬け。製法を察していただければわかるとおり、大量の塩を使って長期間漬け込んでいるだけあって、かなり塩辛い商品ですが、地元ではブツ切りにしてホイル焼きにしたものをご飯のおかずにして食べたりします。(私が子供の頃、午前中で授業が終わった学校帰りにはそこらじゅうの家から「こんかさば」を焼く香ばしい匂いがし、ものすごく食欲をそそがれた思い出があります・・・)また、三枚下ろしで薄皮を剥ぎ、ごく薄くスライスしたものは身が引き締まっております。酒の肴は勿論のこと、これを原材料にしてカルパッチョ風にお召し上がりいただくことも可能です。
これぞ日本のスローフード。カネイシの鯖の糠漬けには能登の伝統的な発酵文化の息吹を感じることができる食材であります。